行間 ―少女と姉さんと研究の真意―


八神桃香は念じ続けていた。桃香の兄、八神祥吾が助けに来てくれるように。
研究員らは未だに話し合いを続けていた。
「解剖・・・種を・・・人間・・・がいいな」
「しかし・・・様な・・・ます・・・か・・・?
「それ・・・連れて・・・」
「い・・・時に・・・かねない」
やはり断片的にしか聞き取れないので、全然意味がわからない。
桃香(ん・・・だんだん意識がハッキリしてきたかも・・・)
そう桃香が思った時、研究者の一人が奥の部屋へ行った。
そしてまた一人、奥の部屋へ行ってしまった。
さっきまで少し狭かった研究室が広く感じる。
「スイマセン、トイレ行ってきていいすか?」
若い男の声がした。
「・・・私が見てるから行ってきなさい」
今度は逆方向から姉さん口調の女性の声がした。
若い男はいそいそと奥の扉へ消えていった。
ふぅ、と息をついた姉さん風の女性は桃香に話しかけてきた。
「ごめんなさいね、こんな所に連れてきちゃって・・・」
まだ念じ続けていた桃香は驚き思わず、え? と言ってしまった。
「いきなりでわけわからないでしょ? でも、許して。これも種を持たない普通の人が安全に暮らせる様にするためなのよ・・・」
姉さん風の人は申し訳なさそうな顔をして桃香に頭を下げた。
桃香「そんな事よりここどこなの?! 何で私ここにいるの?! お兄ちゃんは?! 獅子戸先輩は?!」
桃香は今まで一人で疑問にしていた事を姉さん風の女性に一気に聞いた。
姉さん風の女性はそれをまるで想定内の事かの様に静かに、冷静に答えた。
「ここは桜木防犯会社の地下。表ではただの防犯会社だけど、裏では種の研究を進めている研究所なのよ」
桃香「何よ種って?! チューリップの種の研究に私が関係あるの!?」(※チューリップは球根です。)
「貴方・・・まさか種を知らな・・・!! 主任が来たわ、ごめんなさい」
そういったかと思うと姉さん風の女性は桃香の口の中に何かを入れて水を含ませた。
途端に桃香は激しい睡魔に襲われた。
そして視界がだんだんと閉じていき、意識がまたどこかへ行ってしまった。

主任「何かあったか?」
「いえ、依然眠ったままです。主任」
40代も後半の主任と呼ばれる男はそうか、と言って口をつぐんだ。
少し間が空き二人は黙ったが、天井にあった通気口がガタッと音を立てて沈黙を破った。
「「?!」」
驚いた二人の前に現れたのは銀髪の男の子だった。
銀髪「―――あれ? 2人だけ? 他の人は?」
主任「だ・・・誰だ貴様?! ここがどこだかわか―――」
わかっているのか、と言う前に声が途絶えた。
銀髪の男の子が主任を指差すと同時に主任は壁に叩きつけられた。
銀髪「で、お姉さん? 後の2人はどこにいるの? あ、素直に教えた方がいいよ? そこのおっさんみたいになるからさ」
主任を指差しながら笑う男の子はどこか怖かった。
「知ってどうするつもりよ?」
何とか時間を稼ごうとした。が、奥の部屋から二人が出てきてしまった。
「あれ? 芳川さん主任倒して何やってんすか?」
「・・・って誰だ?! そいつは!!」
銀髪「目標捕捉、5秒以内に排除せよ・・・なんてね!!」
指を二本だし、二人の方へ向けた。その瞬間、主任の男と同じく二人は吹っ飛び奥の部屋へ飛んでいった。
姉さん風の女性―――芳川はひっと小さな声を上げると銀髪の少年に腰に据えていた銃を向けて弾を放つ。しかし―――
銀髪「防御風壁発動」
銀髪の少年が一言放つと、その真っ直ぐ銀色の髪を持つ少年に向かっていった弾は少年の30cm手前で横に軌道がずれた。
そして少年の髪をかすめるかどうかといった所を通り壁にめり込んだ。
銀髪「やめてよ、うざいんだから・・・」
他の三人と同様にして指を女性に突き出した。
銀髪「さて・・・と」
一段落ついたかの様に呟き、眠っている少女―――八神桃香を見つめる。
銀髪「それでは、参りましょうか―――」
というが早いか、バン! という音がしてドアが勢いよく開いた。


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