第九話 ―少年とゲーム脳と鬼神の表情―


銀髪「この方の名前は―――」
銀髪の男の子は息を呑みながら一言ずつ話す。
その声は震えている様な、しかし大真面目な声だった。
涼「何やねんな? はよいいや?」
茶々を入れる涼を無視して銀髪の男の子ははその名を口にした。
銀髪「―――地母神ガイア様だ」
地母神ガイア。そう聞こえた涼は腹の底から何かがこみ上げてきた。
涼「く・・・くはははははは! 桃香ちゃんがガイア様? うはははははは!」
銀髪「アホ髪、それ以上笑ったら殺すぞ?」
物騒な事を言った少年は白く綺麗な指を真っ直ぐ涼に向けた。
それでもまだ涼は笑いながら少年の悪態をついている。
涼「祥吾ちん、こいつ巷で噂のゲームやりすぎ小学生やで! これがゲーム脳って奴―――」
笑いながら話している途中、涼は何かに吹き飛ばされた様に後ろへ飛んでいった。
まるで前方から飛んできた鉄球を体で受け止めたように。
祥吾「なっ・・・涼!!」
ふぅ、とため息を吐いた少年はやれやれといった感じで
銀髪「遠まわしに黙れって言ったんだけど?」
面倒くさそうに呟いた。
ここまで来た経路と逆を辿り、ドアの外に涼は吹き飛ばされた。
両開きのドアが音を立てて開き、そして閉まった。
祥吾「てめぇ・・・涼に何しやがった?!」
涼を助けに行こうとしたが今の衝撃でドアの立て付けが悪くなって開かなくなってしまった。
銀髪「・・・簡単な事だよ?」
少年は指を壁に真っ直ぐに向けて
銀髪「こうやって指先に空気を圧縮させて撃つだけ。要するに圧縮した空気が弾で僕の指が銃って所」
説明をし終わり、壁に向けた指の周りがぐにゃりと曲がったのを確認したと同時に壁がひび割れてへこんでいた。
祥吾「―――っ!! 風系のシードか?」
この辺でこんな事が出来るのは育てる者グロウター以外にいない。いや、この辺だけでなくこの世界中を探してもいないはずだ。
銀髪「はぁ? そんなモンと一緒にしないでよ? 科学なんて嘘臭いモンの力なんてもろいってモンさ。所詮人間界の力なんてたかが知れてるんだよ」
何故か銀髪の少年は種の力については全面否定をしている。
祥吾「・・・それじゃお前の力は何なんだよ!! 超能力とかいうってのかよ!?」
イラついて熱くなっている祥吾に対し、銀髪の小学生は極めて冷静だ。
まぁまぁ、とジェスチャーをしながらまた話し始める。
銀髪「落ち着いてよ、お兄さん? 僕の力はね、天力っていうんだよ。天界の力」
地母神ガイアの次は天力、さらには大天使ラファエルなどとわけのわからない事を大真面目に言っている。
祥吾「いい加減にしろよ、ガキ・・・? これ以上ふざけてるとマジでぶん殴るぞ!?」
冗談を言っているとしか思えない少年に本気でキレ始めた祥吾は口調を荒げた。
しかし、銀髪のその少年はそんな祥吾を無視して今度は独り言を呟き始めた。
銀髪「あ、ヤベ・・・そろそろ帰らなきゃ怒られるかも。それではガイア様、参りましょうか」
祥吾「てめっ・・・!!」
桃香を抱きかかえようとした銀髪の少年に向かって先程の空気銃とやらで床に散らばった石の一つを投げつける。
音も無く―――「かはっ!」と言う声だけはハッキリと聞こえたが―――その一粒の石は少年の背中にヒットし、再度床に落ちた。
少し前につんのめった少年が振り返りながらこちらに向かってくる。
それと同時に少年の方から襲ってきた圧力に祥吾は吹っ飛ばされそうになったが、踏ん張ってなんとか現状を保った。
銀髪「貴、様・・・随分とナメた事してくれるよね・・・殺して欲しいのか・・・」
偉そうなのか生意気なのかわからない口調なのは変わりない。しかし表情は先程までとは全く違っていた。
あどけない少年の様な表情だったのが今はまるで鬼神と向き合っている様にも思えた。
祥吾「またずいぶんとイメチェンしたもんだな・・・」
銀髪「うおぉぉぉぉぉォォォォ!!!」
少年は右手の握り拳を思い切り左にまわし、そのまま横に薙ぎ払う。
その動きに合わせたかの様に祥吾の右の脇腹に強烈な一撃が入り、横に吹っ飛ばされた。
祥吾「が―――っはぁ―――!!」
何が起こったのか全くわかっていない祥吾に少年の殺気が放たれる。
背筋が凍るような感覚を覚えた祥吾は一瞬でマズイ状況だという事を確認した。
少年「―――っ! いけないいけない、僕ってば人間相手に本気出しちゃだめだよね」
言動と様子により少年の怒りは何やら収まったようだ。
祥吾「く―――っ! てめぇ!! 何が目的で桃香を連れて行く!? っつーかてめぇは誰なんだよ!?」
まだ動けない祥吾は何とか時間を稼ごうとする。
銀髪「だからさ、桃香とかいう奴じゃないって言ってるじゃん? お前バカ?」
祥吾「んな事どうでもいい! 質問に答えやがれ!!」
銀髪の少年はうるさいなぁと呟いて面倒臭そうに、しかし急いで事を始めた。


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