第八話 ―少年と緊急危険阻止装置ともう一人の少年―
涼「ちぇいさ――――――!!」
よくわからない掛け声と共に下段回し蹴りを真っ直ぐ涼の方へ向かってきた人工人間の足首にかました。
ガン!! という音とゴン!! という音が響いた。
―――足首にヒットはしたが、それはビクともしなかったどころか、涼にダメージを与えた。
涼「―――んなアホな?! オレのアンダーループエボリューションが・・・!?」
すると今度はロボットが意味不明な名前の技を止められた涼の足首をつかんできた。
涼「ちょ、何すんねん!! 離せや、コラ!!」
叫ぶ涼を無視して170cmの大男を片手で軽々と持ち上げてそのまま壁に叩きつけた。
瞬間。体内にあった酸素が全て強制的に外に出された。
さらに、口の中には鉄の味が広がる。
涼「がッ――――はぁッ―――!!」
ドサッと地面に何かが落ちる音に祥吾が振り返る。
祥吾「涼?!」
涼「だ・・・大丈夫・・・や、祥吾、ちん・・・そっち集中してや・・・」
方膝をついて無理矢理立ち、親指をグッと立てて合図をした。
祥吾「ふざけんな!! 口から血流して何言ってやがる!! 早く逃げ―――」
涼「そっち集中せや!!!」
先ほどまでとは別の男がそこにいた。雰囲気というか、全く違う人間といっても過言でなかった。
祥吾「ち―――っ、こいつぶっ壊したら助けるからな!」
後ろにいる涼に一言送ると自分を捕らえようと向かってきたロボットを横に避けて、
祥吾「っらぁァァ!!」
手を組み合わせて少しよろけたロボットの後頭部に一撃をかます。
攻撃したこちらの手がジンジンと痛みが走る。すると
―――ロボットの口から機械の声が聞こえた。
「緊急危険阻止装置作動。行動を停止します。」
そう聞こえたかと思うと、祥吾が殴ったロボットは動きを止めて地面に突っ伏した。
祥吾「・・・?」
わけのわからなかった祥吾だが、すぐに先ほどやられていた涼が気になった。
祥吾「涼!!」
後ろを振り返りながらそう叫ぶと―――
涼「なんやねん、これ? わかりやすすぎやろ」
笑いながらロボットを足蹴にしている涼がいた。
しかもロボットの後頭部は数センチへこんでいる。
祥吾は手を組んで打ったにも関わらず、手が痺れて激痛が走っているというのに。
二人は光の漏れる扉に早歩きで向かう。
祥吾「第一関門突破って所か?」
涼「第一て・・・これ以上あったらお手上げやで? 流石の涼さんもキツイっつーの」
祥吾「そうだといいけどな・・・」
扉までは何もなかった。
両開きのドアを祥吾が右の、涼が左の扉を蹴り破り、中に入っていくと―――
「―――ん?」
一人の男の子が立っていた。
身長は萌黄先生と同じくらいで小さい方といえる。無地の白いシャツには胸の部分に灰色で『待』とプリントしてある。
人気ブランドの『侍』のパロディであろうその服は小さな少年が着るにしては少し大きすぎた。
ズボンもジーンズを縦横に広げたようなものを履いていて歩くとズボンの裾を踏むのではないかと心配になる。
さらに特徴的なのは少年の頭髪色。キラキラと光を反射するほどの銀色をしていた。
銀髪「あれ? 今日ここにいる研究員って4人でいいんじゃねぇの?」
そう言いながらポケットに手を突っ込み一枚の紙を取り出した。
少し難しそうな顔をして紙を見つめていたが、急に確信したかの様に呟く。
銀髪「やっぱり4人じゃん? あれ? お前ら何? 遊びに来たって口?」
驚いて何も言えない二人に向かって話しかけてきた。
祥吾は何も言わないまま真ん中にある寝台に目をやるとそこには
祥吾「桃香?!」
一人の少女―――八神桃香が横になっていた。しかし、祥吾が呼んでも身動き一つとらないのは寝ているのかそれとも・・・
涼「おい、ガキ!! 桃香ちゃんに何した?!」
少年は「ガキ」という単語に過剰反応をしたのか
銀髪「おい、お前!! 今僕に向かって言ったのか!? そこのアホな髪の毛したバカ!!」
涼の事を指で差し、叫んだ。
涼「髪の事はバカにすんなや!! ガキにガキ言ーて何が悪いねん!!」
少年は唇を噛み締め、舌打ちをした。
銀髪「いつもならぶち殺してる所だけど今は早く帰らなきゃいけないからね・・・見逃してやるよ、バカ頭」
かなり頭にきたのか、涼は叫び声ともとれる声をしていた。
涼「頭ならお前もアホみたいな髪色してるやん!! お互い様や、ボケ!!」
しかし少年はもう聞こえてないかの様にシカトしていた。
祥吾「とりあえず桃香連れて帰るぞ。幸い、研究員はいないみたいだしな」
今度は少年は不思議そうな顔をして祥吾の方を見てきた。
銀髪「…? 桃香ってこの方の事?」
そう言いながら、桃香の方を見た。
祥吾「お前とオレら以外に他に誰がいるんだよ?」
その刹那、少年の笑い声が響いた。
銀髪「アハハハ、この人が桃香? 誰桃香って? アハハハハハハ!」
いきなり笑い出した少年にはかなり驚いた。同時に、一つの疑問が浮上した。
涼「それじゃ、桃香ちゃん以外の誰やっちゅーねん?」
少年は笑うのをピタリとやめて急に真剣な顔になった。
少し間があき、声を出すのに震えながら少年はその名を口にした。