第七話 ―少年とパスワードと博識な獅子―


受付「お帰りなさいませー。」
と、受付嬢は何か書類を整理しながら帰ってきた二人を見ずに挨拶をした。
一人が手をあげて、ただいま。という合図をした。
二人は真っ直ぐエレベーターに向かうとポケットに手を突っ込んでIDカードを取り出した。
もちろん、この二人とは祥吾と涼である。
エレベーターに乗り込み、カードを挿入した。―――が
「パスワードを入力してください。」
と、女の人の様な、機械の様な声が聞こえた。
祥吾「な・・・パスワードって何だよ?!」
小さな声で驚きの声をあげ、涼に答えを求めた。
涼は少し考え、一つの単純な、小学生の様な答えを出した。
涼「sakuragibouhann・・・ちゃうか?」
祥吾「ありえねぇよ!! パスワードはあなたの名前や電話番号などの個人情報と関係のない文字列で、推測されにくいものにしてください!!」
が、今はそれ以外に無いのでとりあえず打ち込んでみる。
「パスワード認証中―――認証しました。階数を指定して下さい。」
涼「・・・ホンマに防犯会社なんか?」
祥吾「・・・結果オーライだな」
祥吾は迷わず、10階を押そうとした―――が
祥吾「なぁ、階段って上り用しか無かったよな・・・?」
涼「あ? 下り口は見当たらなかったわな・・・」
受付の右側にあった階段は確かに上り口しかなかった。―――しかし

エレベーターの階数指定のボタンの中には地下があった・・・・・・

きっと客には見られない様にエレベーターでしか行けないのだろう。
そう、まるで何かを隠すように。
祥吾「・・・B2から見ていくか・・・」
祥吾はそう言うと、B2と表示してあるボタンを押した。すると―――
「地下専用パスワードを入力して下さい。」
祥吾「ちょ・・・まだあんのかよ!?」
涼「―――! 祥吾ちん、これちゃうか?」
涼は自分のIDカードの高田信二と表記してある下を指した。
祥吾「”Research0207”・・・研究?」
やはり、これ以外には思い当たらないので打ち込む。
「認証中―――――番号0207、認証しました。」
祥吾「・・・こういうのって書いてあっちゃマズイんじゃねぇの? カードに暗証番号書いてある様なもんだろ?」
涼「多分、忘れんぼだったんやろ?」
涼はケタケタと笑い、B2のボタンを押した。
エレベーターはやっと動き出し、桜花町の地下へと二人を運んでいった。
涼「やっぱ防犯会社で機密になってる所なんやから並の防犯性じゃないんやろなー」
祥吾「・・・お前、帰っていいぞ? お前には直接関係ないしな」
涼「ふざけんなや!! ここまで付き合わせておいて何言うてんの?! それにここで桃香ちゃん助けておけば二人のゴールインに十歩くらい近づくで!!」
この期に及んで未だ桃香との交際を考えている。こいつはアホなんだな、と祥吾は再確認出来た。
チンッという音がして、ドアが開いた。
そこは幅10mくらいの通路が続いていてた。通路の左右には扉も窓も絵も草もなく、コンクリートの壁が続いていた。
天井には窪んだ穴の中に電球が埋め込まれていて少しは明るかったが、それでも先程まで昼間の日差しの中にいた二人にとっては暗かった。
ずっと先の方で明るい光が漏れているドアがある。
祥吾「さて・・・と。桃香はあそこか・・・?」
祥吾は標的を確かめると、光が漏れる扉へと一歩、また一歩と近づいていった。
しかし、五歩くらい歩いた所でビ―――と大きな音がして
「認証失敗、認証失敗、防犯システム作動します。」
と、先程の声とは違い、機械特有の冷たい声がした。
すると、左右の壁が上に開き、壁の中から2体の人型ロボットが出てきた。
祥吾「な―――ッ! 涼!! 何かしたのか?!」
涼「何でオレなん?! ・・・ここの電球がセンサーになっとるみたいな。多分脳波とかなんとかと一致せなあかんのやろ」
何故涼がそこまでわかるのかは放って置いて、今はこの状況を何とかするのが先決だ。
人型ロボットはこちらに迫ってくる。ロボットにしては動きが早いが、人間程ではない。
襲い掛かってきているように見えるが、この程度なら相手にするのは楽なものだ。
祥吾「ちっ―――涼! ぶっ壊すぞ!!」
涼「へいへい・・・バレたらオレら完全にガッコで絞られんなぁ・・・」
そう言った涼の顔はどこか楽しそうだった。


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