第五話 ―少年と契約と冷静な獅子―


祥吾「―――よし、こんなもんか?」
涼「ちょ、待ちぃや! 何ですき焼きセット2人前やねん! オレの分は!?」
祥吾「自給自足」
涼「何!? 盗めっちゅーのか!!」
涼は勝手に買い物カゴに1人前のすき焼きセットを加えた。
ここは祥吾の家から一番近い『超々』である。
ちなみに読み方は『スーパースーパー』だ。
簡単に出来るという事から今日の晩御飯はすき焼きになった。
涼「祥吾ちんー、これ買ってもえぇかー? 『し〜まぷっち」
祥吾「涼、それ以上は言うな。きっと言っちゃだめだ」
とっととレジをすまし、スーパー袋に入れて帰路を辿る。
涼「んー・・・真ん中がオレになると横から祥吾ちんが来るし、オレが端だと桃香ちゃんが真ん中に・・・」
祥吾「何ブツブツ言ってんだ?」
涼「ん? 今日寝る時は親子三人川の字隊形で寝るやろ? そん時の配置をやな・・・」
祥吾「何でだよ! それぞれ別室!! お前のふとんはソファ!! つーか、帰れよお前!」
涼「なっ、ありえへんやろ!! 何で祥吾ちんちのソファで寝なあかんねや!! あ、桃香ちゃんと二人で寝るから祥吾ちんソファで寝てえーよ?」
祥吾「わたくしめは自分の部屋のふとんで寝ます! やっぱり涼サンは庭で寝てください!!」
涼「ふざけんなやー!! 何でそんな家番わんこみたいな事せなあかんねんな!!」
祥吾「やったじゃねぇか、わんこ様と一緒にしてもらえて。もっともそんな頭したわんこはいないと思うけど」
涼「ちょっと祥吾ちん! オレの頭バカにすんのは許さへんで!?」
祥吾「あー、わかったわかった。バカにすんのは頭の中だけにしとくわ」
涼はまだ何かキーキー言っていたが、いつの間にか家に到着していたので放っておく。
祥吾がドアを開き、まだ何か言っている涼があとに続く。
祥吾「桃香ー、晩飯すき焼きでいーだろ?」
リビングへ入りながら言ったが、リビングには誰もいない。
誰もいない部屋でニュースキャスターだけが真面目に夕方のニュースを報道している。
祥吾「桃香ー? 風呂かー?」
奥にある風呂場もちらと見てみたが、誰か入ってる気配はなかった。
涼「桃香ちゃん、二階にもいなかったでー?」
祥吾「そうか・・・って、お前何勝手に二階調べてんだよ!!」
となるとどこかへ出かけたか、散歩でもしているか・・・
とりあえず夕食の支度をしようとキッチンへ向かった。
涼「―――! 祥吾ちんこれ見てみぃや?」
涼が床に落ちていた一枚の紙を祥吾に渡した。
祥吾「―――何だこれ? ・・・桜木防犯? 防犯会社の契約書じゃねぇか? 桃香の奴勝手に・・・」
涼「ちゃうねんな、祥吾ちん、ここ見てや?」
涼は40行はある中の真ん中より少し下にある1行を指していた。そこにはこう記されていた。

第二十三条『この書類の契約は防犯と共に契約者の体を自由にする権利を此方に与える契約でもある。』

祥吾「―――ッ!!」
急いで契約者名記入欄を見た。
契約者名の所には―八神桃香♪―とかわいい字で書いてある。
祥吾「お・・・ふざけんな!! こんな不条理な契約書あんのかよ!!」
涼「祥吾ちん、この手の契約書なんてごまんとしとるで?」
祥吾「それじゃ桃香はこの桜木防犯会社の奴に連れてかれたってのか?!」
すっかり怒りに浸透された祥吾をなだめる様に
涼「落ち着けや、祥吾ちん? どっちかっちゅーと連れてかれたっちゅーより、争った痕跡が無いねんから上手い事言って桃香ちゃんがついてったんやろ」
妙に涼は落ち着いている。さっきまでうざいほど桃香にかまっていたのに今は他人事の様だ。
祥吾「それじゃ桃香はこの防犯会社にいるんだな?!」
涼「確定は出来へんけど―――な」
涼の言葉を聞いた瞬間、祥吾はその会社へ行く事を決意した。
玄関へ走って向かう。履きなれた運動靴を履いて一言。
祥吾「それじゃ行って来る!! お前は家で連絡待機してろ!」
祥吾は一人で桃香を助けに行くつもりだ。というか、涼は連れていってはいけない何故なら―――
涼「何アホな事言ーてんねや? オレも行くに決まっとるやろ?」
親指を立て、涼は最初から決まっていた事の様に言った。
祥吾「お前バカか?! もしも―――もしも種を使った戦闘になったらどうすんだよ!!」
そう、この町は育てる者(グロウター)の町である。いくら会社員だろうと何かしらの種を持っている出ろう。
そして涼は育てる者(グロウター)ではない。
しかし、涼はそんな事は承知の上で言っていた。
涼「もしもそうなっても逃げる自信はあるからだいじょーぶや!」
ぐっと親指を立ててそう言い放つと祥吾の横に座り込み靴を履き始める。
祥吾「・・・怪我しても知らねーからな・・・」
玄関のドアを開けて今度は外に―――桃香が向かった桜木防犯会社への道を踏み出した。
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