第四話 ―少年と桃香と涙の呟き―


小春先生「お前ら寄り道しないで帰れよー?」
小春先生はめんどくさそうに言い、早々に教室から立ち去った。
―――と同時にキーンコーンカーンコーンと、やはり相変わらずありきたりなチャイムが学校の終りを告げる。
涼「さぁー、祥吾ちん、帰ろうやー!!」
チャイムの音が鳴ってコンマ1秒で席を立った金髪獅子ヘアーは家に帰らずそのままうちに来るみたいだ。
祥吾「別にいーけど、ちょっと遠いぞ?」
祥吾の家までは走ると5分、歩くと15分くらいはかかる。
金髪獅子ヘアーは全く気にしていないかの様―――というか聞いていない。
涼「あぁー、桃香ちゃん、美羽ちゃん、待っててやー!!」
何故か一人で燃えている。
いつの間にかこいつの頭の中では美羽もうちにいる事になっている。
―――当の美羽は隣にはいない。いつの間にかどこかへいってしまった様だ。
とりあえず夕飯の支度などもしなければいけないので早く帰るに越したことはない。
祥吾「んじゃ、帰りますか」
カバンを片手に席を立って教室を後にした。

帰りの道中、祥吾は少し気になっていた事を聞いた。
祥吾「なぁ、お前の種って何なんだ?」
涼「は? 種? 何やねん―――って、あーここの人らて種とかゆーん持ってんやったっけ?」
祥吾「ここの人らって…お前も持ってるだろ?」
涼「オレ種なんてけったいなモン持ってないねんなー」
軽々しく言った言葉にあぁ、そうか…と納得しそうになってしまった。
ここら一帯の学校は種を持った人間を招待する制度だったはずだ。
祥吾「待てよ、それだったら何でお前はここにいるんだ?」
ん―――?と少し間が空いて涼は口を開いた。
涼「普通に受験して通ってるだけやけど?」
祥吾「なっ・・・ここって普通に受験しても通える所なのかよ?!」
涼「それ以外何があんねや? いやー、でも倍率高くてかなりキツかったわー」
祥吾「つーことはお前ってかなり勉強出来んだなー?」
少し感心した。が
涼「いや、隣の奴の見てたに決まってんやろー? 祥吾ちん、アホやなー」
笑い所がよくわからないが、涼は何故か隣で爆笑している。
祥吾「って、お前それ立派にカンニングじゃねえかよ!! 裏口入学より性質悪いわ!!」
涼「何ゆーとんねや? 右見るか左見るか迷った挙句左の奴見たら偶然超頭えぇ奴やったんや!! クラスにいるやろ? なんつったっけな…あのメガネかけてる偉そうな子。いやー、でも左見ておいてよかったわー、運も実力のうちゆーしな」
祥吾「そりゃてめぇズルしてるだけだろ!!」
会話をしながら歩いていると道が短くなった様な気分になる。
実際は15分歩いたのだろうが、5分くらいの長さに感じ取れた。
祥吾が家の鍵を開けようと鍵の隠し場所―――ありきたりに郵便受けの中だが―――を探った所
祥吾「えっと・・・あれ? 家の鍵が無いですよ?」
じわり、と嫌な汗が手のひらににじんできた。
ためしにドアノブに手をかけて開けてみると、やはり開いた。いや、開いてしまった。
涼も口を止め、静かに家の中へ入っていく。
リビングまで足を進めると―――
桃香「あ、お兄ちゃん、お帰りなさーい♪」
そこには祥吾の従妹―――八神桃香がソファに座ってテレビを見ていた。
ズルーッという効果音にあわせて祥吾はコケた。
涼「おいおい、祥吾ちん? そらいくらなんでもベタベッタすぎやんか・・・ってそれより桃香ちゃーん、オレ高等部1年B組の獅子戸」
祥吾「てめぇは黙ってろ!! 桃香! 何でお前うちにいるんだよ!?」
うるさい涼を黙らして桃香へと矛先を向けた。
桃香「えー? 何でって、お兄ちゃん聞いてなかったの? 家借りるお金もないし、一人暮らしとか寂しいしって事でお兄ちゃんと一緒に住むって事になったんだよ?」
祥吾「何で張本人のオレがその事知らないんだよ!!」
桃香「おばさんが伝えておくっていってたから私お兄ちゃんが知ってると思ってたんだよ? 私悪くないもん!!」
祥吾「あんのアホババァ・・・」
祥吾の母はおちゃめでいたずら好きである。
祥吾を困らす事に楽しみを感じ、毎日試行錯誤しているらしい。
この状況も祥吾・母によるものだろう。
涼「祥吾ちん!! 桃香ちゃん一緒に住んでるやんけ!! 祥吾ちんオレに言わんで何するつもりやったん―――」
祥吾「うるせぇ!! お前もう帰れ! いいから帰れ!!」
涼「何でやねんな!! オレ今日祥吾ちんち泊まるつもりやったのに!!」
祥吾「ぅをぃ!! 何勝手に決めてんだよ!!」
桃香「お兄ちゃーん、私お腹減ったー」
祥吾「ん? あぁ、そうだな―――よし、買い物に行こう。よし、行くぞ!」
涼「いってらっさ〜い。さて、桃香ちゃん、何しよか?」
祥吾「お前も来るんだよ!!」
桃香ちゃーん、と涙を流しながら呟く涼を片手に夕飯の買出しに向かった。
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