第三話 ―少年と新クラスと金髪獅子ヘアー―
祥吾と美羽と見た目5年生先生は1-Bと札がかけてある教室の前で止まった。
先生「いいか? 挨拶はよろしく程度でいいぞー?」
美羽「先生、何で私は祥吾クンと同じ組なんですか?」
先生「それは知り合いが一緒の方が楽だというこっちの都合でだなー」
祥吾「え? 先生、そんな身勝手な理由で決めちゃっていいんですか?」
先生「それじゃいくぞー」
祥吾「っておい!! 聞けよ!!」
ガララッという音に反応するかの如く先程まで廊下まで筒抜けだった声が静まり、先生達の方へ視線を集めた。
先生「みんなー、おはよー。今日は転入生を連れて来たぞー」
おぉぉ…と感嘆の声を洩らすクラスメート達。
先生「それじゃ、自己紹介してくれー」
美羽「静岡から来ました、城戸美羽です。皆さん、よろしくお願いします!」
パチパチパチ…という拍手もやみ、祥吾も紹介を始めた。
祥吾「同じく、静岡から来ました、八神祥吾です。よろしくお願いしまーす」
パチパチ…と拍手がした。…あれれ? 美羽の時より少なくないですか?
男子「センセー、美羽ちゃんの席オレの横でえぇんちゃうー? 丁度空いてるしー」
突然、真ん中の最前列に位置する男子がエセ関西弁で提案をした。
先生「黙れよー、涼ー。美羽と祥吾は一番前に座ってもらうからなー」
男子「先生!! 返事がテキトーすぎちゃう!? もっと絡んでこなあかんて!!」
先生「とりあえず真ん中の列の奴らは一個ずつ後ろに下がれー」
涼と先生に呼ばれた男は大柄で身長は170cmくらいか。
金色の髪の毛はあちこちが無造作にあがっていて、後ろから見るとライオンの様な頭だ。
さらに首には銀色のドッグタグ、右耳には3個のピアス。いかにも悪い子ですといった感じだ。
先生「それじゃ、美羽と祥吾は教卓の前に座れよー」
美羽「ちょ…先生! 何でこいつと隣同士に…」
先生「それじゃわたしの紹介からするぞー」
・・・この人、人の話を聞かないスキルを持ってるな・・・
祥吾がしょーもない事を考えている間に真ん中の列は一人ずつ後ろに下がり、先程まで最前列獅子ヘアーが座っていた席が空いた。
とりあえずそこに座った祥吾と美羽は見た目5年生の先生の紹介を聞いた。
先生「名前は小春萌黄(こはるもえぎ)。しっかり覚えとけよー? こう見えても21歳だぞー」
21歳…? 21歳といったらもう成人式を終えてるんですか? あれ? 小学生で成人式?
小春先生「はい、そこー? ものすごく不満そうな顔するなよー? 先生この前街中で煙草で一服してたら補導されたんだぞー?」
生徒「小春センセ、それでは小学生に見えるという事を肯定していますよ」
窓側の列の真ん中辺りにいた爽やかな少年がすかさず突っ込む。
半信半疑(いや、8:2くらいか)な祥吾だが、今はその話は保留にしておく。
小春先生「それでなー、最近悪魔学と天使学にハマっててなー、これがまた―――」
キーンコーンカーコーンと、先生の話を遮るかの様にありきたりなチャイムが鳴った。と思うと、小さな声よっしゃー! という声が前の方からした。
小春先生「――それじゃ、終わるぞー。おまえら、転入生いじめんなよー」
見た目小学5年生の教師はそう言い放ち、教室を出て行った。
―――と、思った矢先もう一度教室のドアが開いた。
小春先生「あー、それと次の時間物理のテストすっから勉強しておけよー」
同時に生徒達の不満の声。それを聞こえないフリをして出て行く先生。
しかしそういった忠告も聞かずに騒ぎ出したかと思うと、恒例質問タイムの時間が来た―――やっぱり美羽ばっかに。
ちくしょう、もうオレは孤独の中で生きてやる、と祥吾が心底落ち込んでいる所にあの金髪獅子ヘアーが来た。
涼「よーぅ、祥吾ちん! オレ、獅子戸涼(ししどりょう)っちゅーんや。ま、仲良くしよーや?」
なんとなく馴れなれしいな、と思いつつも祥吾は話しかけられた喜びの方が大きかったのでとりあえず返答をした。
祥吾「ん? あぁ、よろしくなー」
金髪獅子ヘアーはさらに馴れなれしく
涼「なぁ、あの桃香ちゃんて祥吾ちんの妹なんやろー? えぇなぁ、妹! やっぱお兄ちゃーんとか言われんか?」
祥吾「お兄ちゃんとは呼ばれるけど妹じゃないぞ? 桃香のアホが勝手に言ってるだけだ」
確かに、桃香は「八神祥吾は私のお兄ちゃんです♪」といっていたが。
金髪獅子ヘアーは不思議そうな、しかし、羨ましそうな顔をして再び祥吾に質問を浴びせた。
涼「それじゃなんやねんな? もしや、祥吾ちんあの女の子に…」
祥吾「あの女の子になんだよ!! 桃香はただの従妹で、特別なかんけーはありません!」
確かに従妹で特別なかんけーは無い…と祥吾は考えている。
涼「どっちにしろお兄ちゃんて呼ばれてんやろ? それじゃ万事オーライやんか! なぁ、今度祥吾ちんち遊び行ってえぇか?」
果てしなく馴れなれしいな、こいつ。と思う上、何が万事オーライなのかがわからない。
祥吾「だから妹じゃないからうちには住んでないぞ? 多分近くには住んでると思うけど。」
涼「なっ・・・ま、えぇわ。祥吾ちんとの交友を深めるという事で・・・」
感情のこもっていない声で金髪獅子ヘアー。
何かついでみたいだな、と思いつつも一応OKする。
祥吾「それより、他のクラスメートの事教えてくれよ? とりあえず今は一番お前が頼れるからさ」
涼「せやなぁ・・・あの教室の端っこで独り本読んでんのが田中太朗や。そんで、ベランダから何か叫んでるアホが佐藤一郎で、あっちのボーっとしてんのが―――」
祥吾「違ぇよ!! いや、違くないけど・・・もっとあそこの15インチ砲を両肩に背負ってる子とか、あそこの赤髪を逆立ててぐーすか眠ってる奴とか、熊の毛皮みたいなの着てる奴とか!! 特徴的な奴らがいるだろ!!」
確かに、祥吾が言った様な人達は教室にいる。
涼「なんや、祥吾ちんあーゆーのが好みなんか?」
・・・いや、普通気になりますけど?
涼「15インチ砲は月読衝(つくよみしょう)で、赤髪が火玉紅蓮(かぎょくぐれん)、熊が…何やったっけな? ・・・まぁ、今度でえぇやん」
祥吾「クラスメートの名前くらい覚えておけよ・・・」
そして時間は流れ、退屈な授業も終わり、放課後がやってきた。