第十一話 ―少年と復活の獅子と見えないけど見えるもの―
涼「おいおいおい……なんやねんな、あれ……?」
金色の髪を静かに揺らしながらその男はドアの隙間から中の様子を見ていた。
銀髪の少年の謎の力によって吹っ飛ばされたわけだが、動けるほどの力は残っていた。
腹の底はまだズキズキと痛むが、倒れるほどでもない。
真っ先に祥吾を助けに行こうと初めは考えたが、ドアが開かなかった。
体当たりをしようとした時、冷静になってみたら戦況を見た方がいいと判断した。
そして今まさに銀髪の少年が豹変した所を見てしまったのだ。
涼「あんなんと普通にやりあって勝てるわけないやんけ……」
見ているこちらでさえ蛇に睨まれた蛙になってしまうのだ。
それを真っ向からみている祥吾はどんな気分なのか。想像してしまうと背筋が凍った。
やはり自分も向かった方がいいと思った矢先、少年が再び狂言をした。
銀髪「僕は大天使ラファエル様の配下、嵐の天使ザキエル―――」
『天使』というワードの二度目の発言に涼はそろそろあきれてきていた。
あんなにも真面目な顔をして言われると本当にそうなのかもしれない、という考えも浮かんでくる。
―――天使?
天使…天使…天使?
あのガキ以外で誰かが言ってたような…気がすんねんけどな…?
記憶の奥底に沈んだかけらをゆっくりと拾いあげていく。
えっと…いつやったかな…今日…やったっけ?
数秒、その行動を繰り返した後、ある記憶のかけらが涼の頭を刺激した。
―――それでなー、最近悪魔学と天使学にハマっててなー―――
その言葉が涼の頭を横切った瞬間、ポケットに入っていた携帯電話を取り出し、すぐさまに電話をした。
とある学校の小さな教師の意見を求めて。
★
祥吾「待てよっ!! 何でガイア様とやらが桃香の姿形でこっちの世界にいるんだよ!?」
必死の時間稼ぎだった。
祥吾へのダメージは動けないほどでもないが、それでも大きい。
今は少しでも回復のための時間が欲しかった。
銀髪「質問の時間は終わったはずだよ? 次はお兄さんが死ぬ時間♪」
明るい声で、さらには笑顔でおぞましく、物騒な事をザキエルと名乗った天使は口走った。
銀髪の少年は右手を胸の位置まであげると一言何かを唱えた。
「――――。―――――――。 ―――――――――!!」
祥吾にはあまり聞き取れなかったが、日本語では無かった気がした。
銀髪の少年の右手を見つめていると、その周りの空気が急に捻じ曲がった。
先ほどみた……そう、先ほどの空気銃と同じような現象だ。
しかし―――違う。
空気銃と同じ現象なのだろうが、比にならない。
そよ風とハリケーン、どちらが強いかといっているようなものだ。
少年の右手の手のひらの上に「見えない」がハッキリ「見える」球体のようなものがあった。
銀髪「お兄さん、最後に何か言う事は?」
笑いながら問いかけてくる少年に祥吾は無言を通した。
あっそ、と鼻で笑いながら言ったその天使は右手を上に掲げる。
銀髪「それじゃ、お兄さん、さようなら」