第十話 ―少年と3つの質問と少年の左手―
銀髪「もう時間が少ないんだけどな・・・ま、いっか、邪魔者の排除で遅れたって言えば」
銀髪の少年はぶつぶつと独り言を呟いてはぁ、とため息をついた。
そして右手を突き出して指を3本だした。
銀髪「3つだけ答えてやるよ。はい、1つ目ー」
祥吾「……まずてめぇは何者だ?」
銀髪「僕は大天使ラファエル様の配下、嵐の天使ザキエル。2つ目は?」
軽快に、さも当たり前かのように祥吾にとっては非日常的な事を答えた。
また出てきたラファエルという言葉に加えてさらには天使。
信じきれない、否―――信じられるわけがない祥吾だが少年がどんな奴だろうと関係ない。
祥吾「・・・何で桃・・・ガイア様とやらを連れて行こうとする?」
銀髪「天力の不足。天使の天力が尽きる事は人間でいう所の……死だね」
何故桃香を連れて行くのかがわかれば十分だったはずの祥吾だが、またわけのわからないワードが出てきた。
―――天力。
それを3つ目の質問にすることにした。
祥吾「その天力って何だ? どうやって補充するんだ?」
銀髪「ルール無視かよ・・・ま、いいや。天力ってのは天使にとっての形の源、力の源、そして命の源になってる力の事。 天力は天界に
いれば勝手に体内に蓄積されていくから天界にいさえすれば何も心配は無いんだよ」
ぺらぺらと整理できていない祥吾に向かって少年はだるそうに話す。
銀髪「ガイア様には今天力が不足していて命が危険な……ってこれは人間でいった所か。ま、なんとしてでも天界に連れて行かなきゃガイア様の体は消滅しちゃうんだよ」
少年なりのサービスだったんだろう。だが、余計な事まで教える少年の真意を祥吾は悟る。
銀髪「わかったかい? お兄さん」
祥吾「よくわかんねぇけど2つわかったぜ・・・ガキ」
貴様!! と少年はまたキレかけていたが気に止めない。
少年がキレかけていようと祥吾には関係ない。
祥吾「まず一つ目。今話したことが全て本当だったとして。知ってしまった俺を帰るつもりは無いことと―――」
うんうんと少年は首を縦に振る。
少年が祥吾の事をどうしようと考えていても何も関係ない。
そしてゆっくり深呼吸をして2つ目。
祥吾「―――それと、てめぇをぶっ飛ばさねぇ限り桃香が連れてかれちまうって事がな!!」
自分のすることはただ一つ、目の前で眠る少女一人を守るだけなのだから―――っ!
そう叫ぶと同時に祥吾は地面を思い切り蹴り、一気に銀髪の少年に近づく。
右手の拳が風切りながら真っ直ぐ少年に向かって突き放たれる。
―――――っ!! 音も無く祥吾の右手は何かを豪打した。
銀髪「―――自分から死にに来るなんて・・・愚かだな」
それは祥吾にとって不思議でならない事だった。
自分の放った拳が少年の30cm程の所・・・何もない空間で静止して―――いや、何かによって押し返されている。
銀髪「ホント、バカだよ」
少年が呟いた瞬間、祥吾の体が何かによって吹っ飛ばされる。
真後ろにあった立て付けの悪くなったドアに激突はしたが、あくまでも悪くなっているだけであって幸いにもクッションのようなはたらきをしてくれた。
しかしそれでもダメージがあることには変わりはなかった。
銀髪の少年が一歩こちらに近づいてくる。
祥吾(ちっ・・・マズイな・・・使うしかねぇか・・・?)
祥吾は自分の左手を見つめる。
銀髪の少年が祥吾に近づきながら一言だけ発した。
銀髪「僕は慈悲深いからね、一発で終わらせてあげるよ」