第一話 ―少年と少女と朝のワンシーン―


少年は桜坂学園への登校路を全速力で駆けて行く。
8時寸前という事もあってか、登校路には人っ子一人見当らない。
祥吾「ちくしょう! これじゃマジで遅刻しちまうぞ!!」
遅刻をしないためにも少し加速したその瞬間路地の曲がり角から人影が飛び出てきた。
ドーンなどとコミカルな事はしなく、代わりにガツンという鈍い音が聞こえた。
その人影は思い切り頭をぶつけ、尻から地面に倒れて哀れにも仰向きになっていた。
祥吾「いてててて・・・おい、お前大丈夫か?」
そう言いながら、手を伸ばした先には――――――
少女「いっっっっっっっっったいわね!! 祥吾! あたしのカワイイ顔にたんこぶなんかできたらどうするの!?」
と、激昂する少女がいた。
祥吾「何だよ・・・美羽かよ・・・」
自称カワイイ顔と言っている少女の名前は城戸美羽きどみう雷電の種サンダーシード育てる者グロウターだ。
確か、生まれた病院が同じ、通った幼稚園も同じ、小中学校ともに同じ、さらに全て同じクラスで家も隣と超幼馴染だ。
で、運がいいのか悪いのか同じ時期に同じ場所に引っ越し同じ学校へ。―――顔はそこそこカワイイとは思うが、性格がどうにもいただけない。
美羽「何でこんなベッタベタな朝のワンシーンの相手がアンタなのよ!!」
祥吾「知るか! オレだってもっとカワイ子ちゃんが良かったわ!!」
美羽「な・・・カワイ子ちゃん度だったら美羽ちゃんだけでも5人分じゃない?」
祥吾「ふざけんな、美羽がカワイ子ちゃんだとしたら世界中クレオ・パトラだらけだっつの」
美羽「な・・・っ! 黙って聞いてりゃアンタ・・・許さないわよ!!」
そう怒声を上げる少女の周りのはパチパチと静電気が激しくなった様な音がしていた。
祥吾「ちょ、待て、お前、朝からそれは―――」
  「「―――って、学校!!」」
二人がギャーギャー騒いでいた間に5分は過ぎただろうか。
忘れていた事を確認するかの様に叫び、二人は再び走り始めた。
全速力に近い状態で、彼らはそこについた。

桜坂学園名物、『地獄の桜坂』

坂の手前にある木彫りの掲示板には
『ここは桜坂! 桜坂学園への最後の道で、傾斜は40度だ!! 桜坂学園生徒諸君、この坂を上って桜坂学園の門をくぐろう!』
と記してあるが、引越し初日にブラブラしてる時に見たし、今はそんなものに目を通している暇はない。
この道路の両脇には桜が何十本と植えてある。
ここが平坦な道ならば桜を見ながらゆっくりと歩くことも出来ただろう。
―――いや、今は走らなければマズイのだが―――
しかし、傾斜は40度だ! これはきっと理事長の嫌がらせに違いない、間違いない!!
などと祥吾が考えているうちに二人は坂を上りきって息を切らしながら門を駆け抜ける。
――――――と同時にチャイムが響いた。きっと話しに聞いていた朝礼の開始の合図だろう。
桜坂学園では転入生などは珍しいため、朝礼で紹介されるのだ。
しかし、二人は諦めず走り続ける。靴箱へ向かって全速力で走る。
校舎に入ると、二人は目にも止まらぬスピードで上履きに履き替えたかと思うと、下駄箱近くにある校内地図をみて職員室へ向かって走りだした。
  「「遅れてすいません!!」」
バン! と職員室のドアを開ける音と最後の鐘の音と共に二人は叫んだ。


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